初期斥候のSS vs重騎士編

ほにほにメンバーryoさんによるショートストーリー

キンドル作家(Amazonが販売する電子書籍の作家)もやってらっしゃるのでこちらも是非。

夢は物語の中に~書評・感想文ブログ

斥候「VS重騎士」

 おっす! 俺は初期斥候。

 俺は、ものすごく重要なキャラなんだぜ。
周辺の地形を偵察して資源や羊、イノシシを見つけたり、序盤は息つく暇もないほどに大忙し。

 自陣を走り回った後は、敵地の偵察だ。
うちの大将はバカだから、5回中4回ぐらいは敵の中心に突っ込んでしまって、矢で殺されたりもするんだ……。

 その日は、運が良かったのか、敵の中心を見つけることができなかった。
だから俺のHPも満タン。
10分過ぎに、自陣にどうやらゴリラがきたようで、うちの大将は俺の存在を忘れた。
敵の陣地の近くの森陰で動きをとめたまま、俺はひたすら次の指示を待った。

 開始から、そろそろ30分か。ちっ。また俺様の存在を忘れてやがるぜ、うちの大将。
HPは……まだ45かよ。早く血統入れろよ……。
というか、このままだと俺の出番はもうないんじゃないか……?

 ゴリラの襲撃を受けたときに戻ってればなあ。多少は役に立てたとは思うんだ。それに領主の序盤なら、敵の散兵なんて目じゃないぜ。農民と殴り合っても勝てるのによ。

 あ! 敵の後衛の騎士じゃんか。4体もいる! 見つかったらやばいぜ。囲まれたら一瞬でおだぶつだよ……。

 ――騎士は、斥候に気づくことなく通り過ぎていく。

 ふう。良かった。
けど、いつになったら俺の存在を思い出すのだ……。  

 もう開始から50分か。
うちの大将、ようやく帝王入りだよ。
弓か。弓がメインか。それと投石も出してるな……。
俺の出番は益々ないな。騎兵を作ってくれたら、俺も参加できるっぽいんだが。

 しかし待機状態じゃあなあ。敵の農民がきても殴ることもできないぜ……。

 やべっ。敵の騎士だ。重騎士! 4列!

 何事もなく通りすぎていく……と思ったらわざわざ一体だけ列を離れ、こちらに向かってきた。

 一対一なら、あるいは……。

 ぐほっ。

 一瞬で死んだ。